毎日麺類

19歳。僕の話と映画感想の両方。ネタバレします。

6月18日のバイト終わりに、姉と久しぶりに父に会いに行った。姉の初任給でご飯を食べる(ノーパン)。後から知ったら父の日だったらしい。

 

父は僕の世界の中心に存在していた。父のせいで何回も苦しんだし、死にたくなった。

父はステレオタイプだし、マッチョイズムだった。それがとても嫌だった。

 

だから僕は中学3年生の時に、一人称を「俺」から「僕」に変えた。なるべく他人に圧をかけないようにしようと意識し始めた。父は僕の思想にかなり影響している。影響しすぎている。

 

そんな父と急に会えなくなった。

死にたいと思う頻度はかなり減った。

ただ、中心が居なくなってしまった。僕は父への恐怖や怒りを抱えたまま世界を見ていたことに気がついた。「僕は父のようにはなりたくない」、「父に認められたい」。こういう感情をずっと持って18年間生きてきた。

中心がない。何にも力を込められない。

 

久しぶりに会った父は一緒に住んでいた頃よりだいぶ丸くなっていた。

父は根っから暴力的な人ではなく、母といたら暴力的になるのだと感じた。僕が18の時に夫婦関係は崩れ、母と姉と夜逃げをした。それまでの18年間はずっと相性の悪い夫婦と住んでいたんだなと思ってしまう。

 

ご飯の時は、姉が社会人1年目ということもあり姉の話題のみ。その食事会の最後の方に父から「何か悩みはあるか?」と聞かれた。父に悩みを相談したことなんて一度も無い。そんなこと自分から聞いてくるなんて驚いた。

 

僕は映画制作の仕事に就きたかったけど、メンタルがやられてしまうということを話した。僕が「将来の目標は、、」と言った瞬間に父が止めて「喫茶店に行こう」と提案された。

 

3人で喫茶店。父はアイスコーヒー、姉はアイスティー、僕はクリームソーダ

 

父に話の続きを聞かれる。僕は「将来の目標は心の平穏を保ちたいというだけで、どういう事をしたいかという目標は無くなってしまった」と話した。あと、心の平穏を保ちたいから結婚しても子どもは作りたくないと考えている事も話した。父は「全然それでいいぞ、ただ結婚も子どもも作らないと男はすぐ逃げてしまう」と忠告を受けた。

 

僕は結婚したい。「恋人の前ではカッコつけたいから、すぐ逃げられなくなる。だから大好きな人と結婚はしたい」と父に言った。ステレオタイプな父が長男である僕の子どもを考えていない発言を受け入れるとは思いもしなかった。以前、母に同じことを話したらボロクソに言われた。「あんたみたいな人、みんなから捨てられるよ」と言われた。なのに父は受け入れてくれた。衝撃だった。

 

その流れで僕が昨年に映像の大会で全国優勝をして、その審査員長であった映画監督に「あなたは絶対に映画を作り続けてください」と言われたことを話した。そう言われたのに辞めようとしていることがダサくて悔しいと。そしたら父は「え、なにそれ」と言った。僕は父に身の上話を全くしてこなかったから優勝の話もしてなかった。

 

父は大会の名前を聞いて目の前で調べ始めた。大会のサイトで去年の優勝者の僕の名前を見て、笑顔で握手を求めてきた。

「こんな誇らしいことはない」と言ってくれた。僕は「小さい大会だからそんなすごくないよ」と返したら、「世の中の人ほとんど何かで全国優勝なんてしたことないから大会の大小関係なく誇った方が良い」と言葉をかけてくれた。僕は目の前で泣いた。

 

ずっと父のせいで悩んできた。死にたくなってきた。父が中心から外れて映画を作る意欲も失っていた。何も無かった。そしたら父が僕の映像を見て強く手を握ってくれた。全く僕のことを褒めなかったくせに、誇らしいと言ってきた。こんなに僕を救ってくれる言葉は他にない。

一瞬だけど父が中心に戻ってきて、世界を変えてしまった。散々、僕を殺してきたくせに生き返しやがった。

 

父は僕に好きな映画3本を聞いてきた。

僕は「ゴッドファーザー」、「はちどり」、「風立ちぬ」を挙げた。父から受け継ぐ話、父の暴力性に傷つく話、恋人の前で美しくあろうとする話。

 

父に優勝したんだから映画の道に進むべきだと言われた。僕が言いたかったことはそういうことじゃない。才能を活かせるのかもしれないけど、心の平穏が崩れるのが嫌だ。僕の感情を全ては理解してくれなかった。

 

父と別れて、姉と帰る。姉は「彼氏がいることお父さんに言えなかったなー」と後悔していた。姉は恋人と結婚を考えているから同棲をしたいらしい。僕は親という恋人同士が上手くいかなかったので永遠の愛を信じきれていない。

 

恋人の前では美しくありたいから頑張れると言ったが、それだと自分のダサいところを誰に見せればいいのだろう。本当に苦しくなったらどうすればいいのだろう。姉は宇多田ヒカルの『俺の彼女』という曲を例に出して美しさを求めすぎると上辺の関係になっちゃうよと言ってきた。僕は考えた。自分や相手のダサかったり弱い所を美しいと捉えられる人と恋をしたいと結論が出た。

 

僕は父みたいにはならない。誰の心も殺したくない。美しくありたい。良い恋をしたい。

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